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尾近裕幸・橋本努編『オーストリア学派の経済学』日本経済評論社

 

文献案内

 

 

序章 オーストリア学派経済学の系譜

(0-01) 八木紀一郎『オ−ストリア経済思想史研究──中欧帝国と経済学者』名古屋大学出版会、1988年(メンガー、ベーム=バヴェルク、ヴィーザーのオーストリア学派創始者達の思想と学説を、当時の歴史的・時代的背景の中で読み解く史的研究。

(0-02) カレン・I・ヴォーン『オーストリア経済学──アメリカにおけるその発展』渡部茂/中島正人訳、学文社、2000年(「オーストリア学派経済学とは何か」という問題を、メンガー経済学の再考、経済計算論争の回顧、そして1970年代のアメリカにおけるオーストリア学派の「復活」を通じて考察した意欲的研究。特に、均衡をめぐるカーズナーとラックマンの対立に関する説明は、現代のオーストリア学派経済学の動向を知る上で重要な論点を提供してくれている。

(0-03) A.H.シャンド『自由市場の道徳性──オーストリア学派の政治経済学』中村秀一/池上修訳、勁草書房、1994年(オーストリア学派の哲学的背景と方法論、自由市場の性質や機能と道徳性の問題、自由市場経済学の個人的自由と平等に対してもつ重要性、時事的問題に対するオーストリア学派の立場などを解説した現代のオーストリア学派の入門書。

(0-04) 三土修平『経済学史』新世社、1993年(理論の発展という観点から経済学の歴史を解説した教科書。「限界革命」の分析上の意義についてはこの本を参照した。

 

第1章 カール・メンガー

【メンガーの著作】

(1-01) 『国民経済学原理』安井琢磨/八木紀一郎訳、日本経済評論社、1999

(1-02) 『一般理論経済学──遺稿による「経済学原理」第2版』(全2冊)八木紀一郎/中村友太郎/中島芳郎訳、みすず書房、1982年

(1-03) 『経済学の方法』吉田昇三改訳、日本経済評論社、1986年

 

(1-01)(1-03)は、メンガーの手によって出版された主著。(1-02)は死後に息子K・メンガーによって遺稿が整理され(1-01)の第2版として出版されたものだが、その内容を巡っては評価が分かれている。

 

 

【メンガーに関する参考文献】

(1-04) 内田博「カール・メンガー──主観主義の経済学」『経済思想史──社会認識の諸類型』 太田一廣/高哲男/鈴木信雄/八木紀一郎編、名古屋大学出版会、1995年(メンガーの生涯と著作および彼の主著『国民経済学原理』の内容がコンパクトに整理され紹介されている。)

(1-05) エミール・カウダー『限界効用理論の歴史』斧田好雄訳、嵯峨野書院、1979年(メンガー経済学の哲学的・思想的背景を論じたのもので、ワルラスとの比較についても論じられている。)

(1-06) 根岸隆『ワルラス経済学入門』岩波書店、1985年(理論史的な見地からなる経済学史。本章で扱ったメンガーの販売力の議論は、本書に拠る。)

(1-07) 八木紀一郎「メンガー『経済学原理』の成立」『経済論叢』(京都大)Vol.146 No.1、1990年7月(メンガー『国民経済学原理』の成立を丹念にたどったもので、本章での論述もこれに多くを負っている。)

 

第2章 オイゲン・ベーム=バヴェルク

【ベーム=バヴェルクの著作】

(2-01) 『資本利子理論の歴史と批判』塘茂樹訳、日本経済評論社、近刊

(2-02) 『資本の積極理論』塘茂樹訳、日本経済評論社、近刊

(2-03) 『経済的財価値の基礎理論──主観的価値と客観的交換価値』長守善訳、岩波文庫、1932年

(2-04) 『マルクス体系の終結』木本幸造訳、未来社、1969年

(2-05) 『国民経済学──ボェ−ム・バヴェルク初期講義録』塘茂樹訳、嵯峨野書院、1994年

 

(2-01)(2-02)がベーム=バヴェルクの主著。(2-03)は学派の理論を普及するために書かれた論文。(2-04)はマルクス『資本論』の第一巻と第三巻の間の体系上の矛盾を指摘した論文。(2-05)は訳者の手になるインスブルック大学におけるベーム=バヴェルクの講義録ノート復刻版からの翻訳。

 

【ベーム=バヴェルクに関する参考文献】

(2-06) 石塚杉男『資本と時間──オ−ストリア派資本理論の研究』九州大学出版会、1993年(ベーム=バヴェルクの資本理論を中心に、その前史とその後の論争や、ヴィクセル、ハイエクらによる継承・発展、ヒックスの新オーストリア資本理論に関する理論的研究の成果。)

(2-07) シュムペーター「ボェーム・バヴェルク(1851−1914)」『十大経済学者──マルクスからケインズまで』中山伊知郎/東畑精一監修、日本評論社、1952年(ベーム=バヴェルクのゼミナールの出席者であったシュムペーターによって書かれた学問的生涯とその業績の紹介をした伝記的評論。)

(2-08) 三谷友吉『ボェーム資本利子論の研究』大東書館、1942、増補版、『資本利子論の研究──ボェ−ム資本利子論その発展と適用』三和書房、1952年(ベーム=バヴェルクの主要理論についての日本語の唯一のまとまった研究書。)

 

第3章 ルードウィッヒ・フォン・ミ−ゼス

【ミーゼスの著作】

(3-01) 『貨幣及び流通手段の理論』東米雄訳、日本経済評論社、1980年

(3-02)        「社会主義共同体に於ける経済計算」『集産主義計画経済の理論』ハイエク編、迫

間眞治郎訳、実業之日本社、1950年

(3-03) 『ヒュ−マン・アクション』村田稔雄訳、春秋社、1991年

(3-04) 『経済科学の根底』村田稔雄訳、日本経済評論社、2002年

(3-05) 『自由の決断──今日と明日を思索するミ−ゼスの経済学』村田稔雄訳、広文社、1980年

 

(3-01)(3-03)がミーゼスの主著。とくに(3-03)は、ミーゼス経済学の集大成。(3-02)は社会主義における合理的な経済計算の可能性を否定した最も有名な論文である。(3-04)は、最後の著作でミーゼスの経済哲学が簡潔に述べられている。また(3-05)は、学生向けに行われた講演記録であり、ミーゼス経済学のエッセンスが要約されている。

 

【ミーゼスに関する参考文献】

(3-06)  カレン・I・ヴォーン『オーストリア経済学──アメリカにおけるその発展』渡部茂/中島正人訳、学文社、2000年

(3-07) マルギット・フォン・ミーゼス『ミーゼスの栄光・孤独・愛』村田稔雄訳、日本経済評論社、2001年(経済学や思想面ではなく人物像や彼をめぐる多様な交友録といった私生活を多くのエピソードとともに語ったミーゼスの妻の手になる伝記で、ミーゼスの人となりが生き生きと描かれている。)

(3-08) 村田稔雄「ミ−ゼス研究(一)〜(四)」『横浜商大論集』Vol.6 No.1,1972年10月 ,Vol.7 No.1,1973年11月,Vol.10 No.1/2,1977年2月,Vol.12 No.1,1978年12月(ミーゼスに直接の教えを受けた人の手になるミーゼスの人間行為学の基本思想についての論究。)

 

第4章 フリードリッヒ・ハイエク

【ハイエクの著作】

(4-01) 『ハイエク全集』(全10冊)西山千明/矢島鈞次監修、春秋社、1986-89年

(4-02) 『資本の純粋理論』 一谷藤一郎訳、実業之日本社、1944、改訳版(全2巻)、1952年

(4-03)  『隷従への道──社会主義と自由』 一谷藤一郎/一谷映理子訳、創元社、改版、1992年、『隷属への道』西山千明訳、春秋社、1992年

(4-04) 『科学による反革命──理性の濫用』佐藤茂行訳、木鐸社、1979年

(4-05) 『貨幣発行自由化論』川口慎二訳、東洋経済新報社、1988年

(4-06) 『市場・知識・自由──自由主義の経済思想』  田中真晴/田中秀夫編訳、ミネルヴァ書房、1986年

(4-07) 『ハイエク、ハイエクを語る』スティーヴン・クレスゲ/ライフ・ウェナー編、嶋津格訳、名古屋大学出版会、2000年

 

(4-01)の第5巻から第10巻がハイエクの主著とされる。(4-01)の第1巻、第2巻は、前半期の経済学者ハイエクの主要著作と論文。(4-01)の第3巻と(4-04)は、中期ハイエクの重要な論文を収録。(4-01)の第4巻は理論心理学の著作だがハイエク思想を理解する上で重要な一冊。(4-03)は一般向きに書かれたベストセラーで、彼を一躍有名にした。(4-05)は貨幣の発行権を民間に移行させてしまうという主張で、後期ハイエクの思想をよく表している。(4-06)は日本で編集された論文集だが、ハイエク思想のエッセンスを知るのに大変便利。(4-07)はハイエクが生前に残した自伝的メモやインタビュー記事を再構成した、いわば自伝。

 

【ハイエクに関する参考文献】

(4-08) 江頭進『F.A.ハイエクの研究』日本経済評論社、1999年(ハイエクを一貫して経済学者としてとらえ、その理論的、哲学的発展とその変容を解き明かした研究書。)

(4-09) G.R.スティール『ハイエクの経済学』渡部茂訳、学文社、2001年(ハイエク経済学の景気変動、資本、貨幣と価格などの解明とその社会哲学的体系の分析を行った包括的な研究。)

(4-10) 橋本努「フリ−ドリッヒ・A.ハイエク――社会の自生的秩序化作用の利用」『経済思想史――社会認識の諸類型』太田一廣/鈴木信雄/高哲男/八木紀一郎編、名古屋大学出版会、1995年(ハイエクの生涯と著作ならびに彼の市場擁護論、秩序論の思想がコンパクトに整理され紹介されている。)

(4-11) 渡辺幹雄『ハイエクと現代自由主義――「反合理主義的自由主義」の諸相』春秋社、1996年(「反合理主義的」自由主義者ハイエクと、バーリン、オークショット、ロールズ、ポパー、ポランニー等の主要な現代自由主義者との優れた比較思想史的研究。)

 

第5章 経済学方法論

(5-01) ハイエク『科学による反革命──理性の濫用』佐藤茂行訳、木鐸社、1979年(科学主義批判として書かれた物であるが、とくに第一部「科学主義と社会の研究」の中にハイエクの方法論的主張をみることができる。)

(5-02) マハループ『経済学と意味論』安場保吉/高木保興訳、日本経済新聞社、1982年(主に方法論の論文を収録したマハループの論文集は残念ながら翻訳されていないが、本書でもマハループの方法論上の主張の一端を知ることができる。)

(5-03) ミーゼス『ヒュ−マン・アクション』村田稔雄訳、春秋社,1991年(ミーゼスの方法論上の主張は本書第一部にみることができる。)

(5-04) メンガー『経済学の方法』吉田昇三改訳、日本経済評論社、1986年(メンガーの方法論上の主張は本書で知ることができる。)

(5-05) B.J.コールドウェル『実証経済学を越えて――20世紀経済科学方法論』堀田一善/渡辺直樹監訳、中央経済社、1989年(方法論が科学哲学的見解に依っているとみる著者は、20世紀の科学哲学を概観したあとロビンズ、ハチスン、マハループ、フリードマン等の代表的方法論的著作が検討されている。さらに現代の方法論が抱える諸問題について著者の暫定的解答が試みられている。)

(5-06) 橋本 努『自由の論法――ポパー・ミ−ゼス・ハイエク』創文社、1994年(方法論の理論を論じた章で多様な方法論上の概念や機能を明確に整理した上で、著者のキー概念「方法の思想負荷性」でポパー・ミ−ゼス・ハイエクの方法論とその脱思想化過程の分析、さらにポパー、ミーゼス、ハイエクの思想についての比較検討を行っている。方法論を考える上で大変刺激的な著作。)

(5-07) L.ロビンズ『経済学の本質と意義』中山伊知郎監修/辻六兵衛訳、東洋経済新報社、1957年(経済学を目的と手段とのあいだの「希少性」により定義した、経済学方法論の古典的著作。)

 

第6章 経済計算論争

(6-01) ラヴォア「社会主義経済計算論争の標準的解釈への批判」日向健訳、『山梨学院大学経営情報学論集』No.4、1998年

(6-02) ラヴォア『社会主義経済計算論争再考──対抗と集権的計画編成』吉田靖彦訳、青山社、1999年((6-01)と(6-02)は、ラヴォアによる経済計算論争研究の代表作。必読文献)

(6-03). I.カーズナー「経済計算論争──オーストリア学派への教訓」日向健訳、『社会科学研究』(山梨学院大学社会科学研究所)第21巻、1997年(カーズナーは、経済計算論争への参加がオーストリア学派の独自性と明確化させたと主張している。ラヴォアの研究とともに経済計算論争についてのより深く学ぶための必読文献)

(6-04) ハイエク編『集産主義経済計画の理論』迫間眞治郎訳、実業之日本社、1950年(経済計算論争の原典の一つ。ミーゼスの1920年論文「社会主義共同体における経済計算」のほか、バローネの論文、そしてハイエクによる二つの解説論文などが収録されている。

(6-05) 西部忠『市場像の系譜学──「経済計算論争」をめぐるヴィジョン』東洋経済新報社、1996年(経済計算論争の経過を丹念に追いながら、論争参加者が抱いていた市場のヴィジョンを明らかにした研究書。

 

第7章 知識論

(7-01) オドリスコル/リッツォ『時間と無知の経済学──ネオ・オ−ストリア学派宣言』橋本努/井上匡子/橋本千津子訳、勁草書房、1999年(オーストリア経済学派の基本的枠組みである主観主義、知識、時間、不確実性といった基礎概念の理論的発展と、その応用として、競争、独占、貨幣といった政策的問題が検討されている。オーストリア学派の新たな地平を築くものと評価されている。)

(7-02) 江頭進『F.A.ハイエクの研究』日本経済評論社、1999年(中期から後期にかけてハイエクの経済学、社会哲学の中で知識論は重要な位置を占めているが、著者は第8章でハイエクの知識論を検討している。著者はハイエクの提出した知識論が多くの拡張を可能にすることを指摘している。)

(7-03) ベルグソン『創造的進化』真方敬道訳、岩波文庫、1979年(哲学者ベルグソンの主著の一つ。従来の進化論、機械論と目的論を詳細に検討・批判して自説の「生の飛躍」(エラン・ヴィタール)が説かれている事で有名であるが、ネオ・オーストリア学派の立場からはとくにベルグソン哲学の主要テーマである時間論、「現実の時間」概念の理解が重要。)

(7-04) マイケル・ポラニー『暗黙知の次元』佐藤敬三訳、紀伊国屋書店、1980年(ポランニーの主著『個人的知識』の主要テーマをコンパクトにしたものであり、ポランニー思想のエッセンスを知るこができる。とくに第一部では、ポランニー思想のキー概念である非言語的に知ること=「暗黙知」の重要性を論じている。)

(7-05) 間宮陽介『モラル・サイエンスとしての経済学』ミネルヴァ書房、1986年(期待、貨幣、消費、コンヴェンション、トラディション等々と言った多様なテーマを論じながら、モラル・サイエンスが無知な存在としての人間論を基礎に据えた知識論と活動論と社会論の総体からなることを見出している。)

(7-06) ギルバート・ライル『心の概念』坂本百大/宮下治子/服部裕幸訳、みすず書房、1987年(二つの知識のあり方、「方法を知ること」と「内容を知ること」を指摘し、とくに前者の知識のあり方の重要性を強調した第二章を参照。)

 

第8章 フリーバンキング論

(8-01) ハイエク『貨幣発行自由化論』川口慎二訳、東洋経済新報社、1988年

(8-02) 池田幸弘「フリーバンキング論:評価と展望」『経済思想にみる貨幣と金融』大友敏明/池田幸弘/佐藤有史編、山嶺書房、2002年(本章で取り上げられなかったフリーバンキング論者の紹介やホワイトの果たした貢献、あるいはフリーバンキング論批判論の紹介など、本章を補完する内容になっている。)

(8-03) 大黒弘慈『貨幣と信用──純粋資本主義批判』東京大学出版会、2000年(第4章「中央銀行と準備金」の章でハイエク流フリーバンキング論を主にバジョットの論議に依りながら批判を行っている。)

(8-04) 橋本千津子「オーストリア学派の貨幣制度論──メンガーからミーゼスへ」『経済学研究』(北海道大学)Vol.50 No.1、2000年(メンガーからミーゼスにいたる貨幣信用制度論をフリーバンキング論構想の視点から学説史的に再検討している。)

 

第9章 市場プロセス論

(9-01) カーズナー『競争と企業家精神──ベンチャーの経済理論』田島義博監訳,千倉書房、 1985年(市場プロセスの解明と市場プロセスおける企業家の役割を強調し経済理論の中に整合的に位置づけたカーズナーの主著。)

(9-02) 井上義朗『エヴォルーショナリー・エコノミクス──批評的序説』有斐閣、1999年(現代経済学のなか最近注目を集めている進化論的経済学を幅広い理論的背景から追求し、可能性とともに思想的課題を考察するなかで著者はエヴォルーショナリー・エコノミクスの「市場論的な接近」を試みる学派としてネオ・オーストリア学派の市場プロセス論を取り上げ検討している。)

(9-03) 尾近裕幸「市場プロセスの理論について──オ−ストリア理論の批判的考察」『大阪市大論集』No.59、1990年2月(カーズナー、オドリスコル/リッツォ、ラックマン等の市場プロセス理論を「均衡化」の点から比較検討し、その対立点を「定常性」の視点から考察をしている。そして三人の市場プロセスが定常的なものの上に立つ理論であることを示している。)

(9-04) 中村秀一「モダン・オ−ストリアン市場プロセス理論の特質──ネオクラシカルとポスト・ケインジアンとの間で」『日本の社会経済システム──21世紀に向けての展望  『日本経済政策学会年報』No.42、1994年(ネオ・オ−ストリア学派理論の骨格をなす市場プロセス理論の方法論的特徴と市場プロセス理論の特性を明らかにし、ネオ・オ−ストリア学派の市場理解を探っている。)

(9-05) カレン・I・ヴォーン『オーストリア経済学──アメリカにおけるその発展』渡部茂/中島正人訳、学文社、2000年(第7章・市場プロセスでは、1970年代から80年代半ばまでアメリカのネオ・オーストリア学派経済学のリーダーとして認められていたカーズナーとラックマンのアプローチの違いを検討している。オーストリア経済学と新古典派正統との整合性をめぐる対立、経済学における均衡分析の性格と役割をめぐる問題、これら問題の検討を通じてネオ・オーストリア学派経済学の現状と将来を探っている。)

 

第10章 企業家論

(10-01) カーズナー『競争と企業家精神──ベンチャーの経済理論』田島義博監訳、千倉書房、 1985年

(10-02) カーズナー『企業家と市場とはなにか』西岡幹雄/谷村智輝訳、日本経済評論社、2001年(カーズナーの経済学的理論「企業家的発見の理論」「市場プロセス理論」の簡潔な要約。またネオ・オーストリア学派経済学の入門書としてもお奨めの小冊子である。)

(10-03) 池本正純『企業者とはなにか──経済学における企業者像』有斐閣、1984年(シュンペーター、マーシャルとそれ以後のカーズナー、ナイト、ペンローズ等、代表的な論者たちの企業家像の研究。)

(10-04) J.A.シュンペーター『企業家とは何か』清成忠男編訳、東洋経済新報社、1998年(シュンペーターの企業家を論じた4編の論文を収録。)

(10-05) 長谷川啓之「現代オ−ストリア学派の企業者観(1)〜(3)」『商学集志』(日本大)Vol.61 No.1、1991年6月、Vol.61 No.2、1991年9月、Vol.61 No.3、1991年12月(メンガー、ミーゼス、ハイエクの企業者観についての論究。)

(10-06) 長谷川啓之「I.カーズナーの企業者活動論──経済発展との関連を中心として」『商学集志』(日本大)Vol.60 No.4、1991年3月(カーズナーの企業者論の研究とその商業活動に注目した企業者活動論から、東南アジアを中心とした華僑等の経済活動の重要性の理論的な関連を明らかにしている。)

(10-07) R.ヘバート/A.リンク『企業者論の系譜――18世紀から現代まで』池本正純・宮本光晴訳、ホルト・サウンダ−ス・ジャパン、1984年(「企業者」を視軸にしたコンパクトな学説史。)

 

第11章 ゲーム理論

(11-01) フォン・ノイマン=モルゲンシュテルン『ゲームの理論と経済行動』(全5冊)銀林浩/橋本和美/宮本

敏雄監訳、東京図書、1972-1973年(ゲーム理論の誕生を記念する古典的著作。原著 Theory of Games and Economic Behavior(Princeton University Press)も手に入りやすいので、せっかくチャレンジするならば原語に挑戦するのもよい。英語は平明、使われている数学も難解ではないが、だからといって簡単に読み通せるわけでもない。)

(11-02) 鈴木光男『新ゲ−ム理論』勁草書房、1994年(ゲーム理論の理論的教科書は英語、日本語で書かれたものがいくつもあるが、理論中心で背景の説明が不十分だったり、逆に理論の一部分の解説に重点を置きすぎて体系のみえなかったりする場合があるので要注意。同書の著者は日本のゲーム理論研究の草分け的存在で、説明のバランスがよく、また章や節の終わりにコラムや短歌(!)がのっていたりして工夫が見られる。さらにその背景や意味を考えたい人は同じ著者の『ゲーム理論の世界』勁草書房、1999年、を読むとよい。)

(11-03) ウィリアム・パウンドストーン『囚人のジレンマ──フォン・ノイマンとゲームの理論』松浦俊輔/他訳、青土社、1995年(ゲーム理論とその歴史に興味をもった人の次なるステップとしてお勧めできる一冊。ゲーム理論をつくったもう一人の人物、フォン・ノイマンに焦点をあて、理論的な説明やその後のゲーム理論の歴史にも踏み込んでいて、興味深く読める。)

(11-04) 中山幹夫『はじめてのゲーム理論』有斐閣、1997年(あまり数式を使わないゲーム理論の初心者向けの入門書だが、進化的ゲームや限定合理性などの分野にも触れられている。)

 

第12章 景気循環理論

(12-01) ミーゼス『ヒュ−マン・アクション』村田稔雄訳、春秋社、1991年(特に第20章「利子、信用拡張および景気循環」)

(12-02) ハイエク『ハイエク全集1  貨幣理論と景気循環/価格と生産』古賀勝次郎/谷口洋志/佐野晋一/嶋中雄二/川俣雅弘訳、春秋社、1988年(ギャリソンの研究が日本語で読めない現在、やはり参照すべきはミーゼスとハイエクであろう。さまざまな解説もあるが、やはり原典を読んでもらいたい。)
(12-03) 景気循環学会編『ゼミナール景気循環入門』東洋経済新報社、2002年(景気循環の現象・歴史、それを説明する理論、実際の予測やその手法、そして経済政策などをわかりやすく解説した入門書。)

 

第13章 新自由主義

(13-01) 有賀誠/伊藤恭彦/松井暁編『ポスト・リベラリズム──社会的規範理論への招待』ナカニシヤ出版、2000年(第3章・経済的リバタリアニズム〔尾近〕、第4章・倫理的リバタリアニズム〔アスキュー〕で、リバタリアニズム思想の理論的・実証的背景、原理や基本的立場の説明、中心概念である「自己所有権」の説明が論じられている。)

(13-02) 大野忠男『自由・公正・市場』創文社、1994年(自由主義に関する論文のほかに、ロールズの正議論に関する論文が収められた論文集であり、新自由主義に関して手際よい説明が行われている。)

(13-03) ジョン・グレイ『自由主義』藤原保信/輪島達郎訳、昭和堂、1991年(自由主義の歴史と理論がわかりやすく書かれている入門書。)

(13-04) ノーマン・バリー『自由の正当性──古典的自由主義とリバタリアニズム』足立幸男監訳、木鐸社、1990年(現代自由主義の諸流派の理論的基礎を詳細に検討し、その主張の論点や差異をわかりやすく整理した優れた著作。)

(13-05) 森村進『自由はどこまで可能か──リバタリアニズム入門』現代新書、講談社、2001年(ミーゼスやロスバードなどの論客をその一部とするリバタリアニズムの基本的な特徴について、包括的かつ平易に述べている。)

 

以上に紹介した文献は、本書の内容に関係のある主要な邦文献の一部である。なお、本書「終章」においてとりあげた文献、また、オーストリア学派全般に関するさまざまな文献に関する情報(国内・国外)については、下記のホーム・ページにおいて紹介されているので、参照されたい。

 

ホーム・ページ案内

[HP1] 井上一夫の作成による「自由主義に関する文献案内」

      (http://www5b.biglobe.ne.jp/~biblio/index.htm)

[HP2] 橋本努のホーム・ページ(http://www.econ.hokudai.ac.jp/~hasimoto/index.htm)

における「研究のための文献リスト」

[HP3] ミーゼス研究所のホーム・ページ(http://www.mises.org)における「Austrian Study Guide」